この記事は2009年6月22日にCNET JAPANに投稿したものです。
つい最近まで、メール配信エンジンの善し悪しはその配信スピードだった。どのエンジンがどれほど早いのかが重要だった。 それは1時間あたりに何通 のメールが配信できるかだ。 たとえば100万通のメールを送信するのに何時間かかるのかということだ。 また携帯電話にメール配信する場合、夜間は送ら ないという程度だった。 先日そのメール配信エンジンを販売しているダブルクリック社の メール配信エンジンお話を伺い、その機能の発達にいささか驚かされたのだ。 前回のブログでOneToOneのことについて書いたが、その中でメールマー ケティングはOneToOneの重要な要素だと書いた。 今回はそのメールマーケティングとメール配信エンジンについて書せていただく。
PUSH型・PULL型って
パソコンと携帯へのメール配信は、大きく異なる点がある。 メール配信で相手がパソコンだと、受信者がパソコンにあるメーラを立ち上げるとプロバイ
ダーに溜まっている自分宛のメールがパソコン側に流れてくる。 これをPULL型と云い、実際の利用時に受信者に渡されるタイプをいう。
一方携帯
電話は、受け手の都合に関係なく、いつでもメールを受信する。 これをPUSH型と云う。 携帯がメールを受信するとバイブしたり、受信音が鳴る。 これ
が就寝中だと、受信者を起こしてしまいクレームとなる危険があるが、タイムセールなどの緊急告知では、リアルタイム性に格段の強みがある。 ショップサイ
トが夜中に携帯メールを流さないのはこのためで、PUSH型のメールでは、夜中は送らないように何時から何時の間は送信を停止するような機能は必須なの
だ。
携帯電話へのメール配信
まず、上で書いたように携帯メールはPUSH型であるため、夜間の送信はしない。 その他にも配信エンジンに とってやっかいなことがある。 携帯メールはまずDocomoなどのキャリアにメールを配信する。 次に各キャリアはそのメールを各個人の携帯に配信す る。 最初の関門、キャリアに送るときにスパム配信と間違えられると、配信がブロックされてしまい、しばらくの間送れなくなる。 これをキャ リアブロックと呼ばれる。 キャリアによってその判断条件はまちまちではあるが、配信スピードが速すぎたり、メールとメールの送信間隔 がやたらに短いとキャリアブロックされることがある。 しかも、この判断条件は、常に一定のものではなく、変化する。 そこが配信エンジンをサービスして いるところのノウハウの部分でもあるそうだ。 最大限早く送るには、キャリアブロックになる直前のところで送るそうだ。(なんとなく、SEO対策に似てい る)
パソコンへのメール配信
一般的に送信先のメールアドレスのドメインによって、そのメールが読まれる確率は異なる。 つまり、HotMailなどのフリーのメールは、個人的 なメールアドレスとは別に使われることが多く、そのため読まれる確率も少ないそうだ。 そこで配信エンジンは読まれる確率の高いドメインからメールを配信 するのが原則。 また、携帯キャリアと同じように配信スピードが早すぎると、プロバイダーはスパムメールと判断される危険も高くなる。
エラー処理が重要
メールは送れば必ず相手に届くというものでもない。 相手のメールボックスが満タンだったら、送れないし、相手のサーバがビジー状態やダウンしてい ても送れないのだ。 相手のメールアドレス自体変わってしまってももちろん送れない。 このように送れない原因はさまざまである。 一定時間経過の後、リ トライすれば送れる場合もあるし、永久に送れない場合もある。 エラーの種類を見分けて、再度送るのか、もう送らないのかを個別に判断する。 相手のメー ルアドレスが変わってしまったのが原因で送れない場合、何度も送り続けるのは無駄であるし、貴重な送信時間を浪費するこ とになる。 送信エラーの種類によって、二度と送らないものと、繰り返し送るものを判別する必要がある。 相手のメールアドレスが間違っている場合とか、 すでに使われていないものを顧客リストからはずすことをクリーニングと呼ばれ、効率の良いメール配信にはとっても重要 な要素なのだ。
メールでお客の興味を知る
メール配信エンジンの機能としてでできることは、そのメールが読まれたのか(開封された)? どの部分(商品記事)が読まれたのか? しかもお客の 識別もできる。 これはOneToOneマーケティングにとっては重要である。 お客はいろいろなショップからの案内メールであふれていて、なかなかメー ルを読んでくれない。 その原因の一つには、何度も自分にとって興味のないメールが続くと、そのショップからのメールは読まなくなる。 私自身もそう だ。(メールのタイトルも重要な要素となるが、これはまた別の時にでも書く)
興味の変化
メールで個客の興味はどのようにして見つけるのか。 以前からあるが、会員登録の際、メール配信を希望しますか?の後に、どのような商品カテゴリー の記事を希望しますかというような質問がある。 これは興味の移り変わりは察知できない。 極端な例をあげれば、冷蔵庫をほしがっていたお客が、冷蔵庫を 買ってしまうと、もう冷蔵庫に対しては興味はなくなる。 子供に関する商品も乳児のときと、幼児のときには変わる。 そうなるとお客はその後興味のない メールを受け取ることになるのだ。 たとえ興味のあるカテゴリーを選択してもらっても、その変化を察知することは容易ではない。 またマイページなどで顧 客情報を変更できるようになっていても、ほとんどの顧客は変更しないものである。
配信エンジンで変化を察知
そのため、メール配信にはいろいろな細工が用意されている。 開封確認や、どの部分が読まれたかを掴むこともできる。 そしてお客に合わせて商品記 事ごとに並び替える。 その個客が興味のある順に商品記事の順番を並べるのが理想的だと思う。 さらに、アクセス解析と併用すると、商品を買い物かごに入 れたが購入に至らなかったとき、その商品カテゴリーの記事をメールの先頭に持ってきて、再度一押しをすることもできる。
集計から分析へ
メールマーケティングを理想的なものに近づけるには、個々のアクセス分析の併用が重要になってくる。 以前はアクセス分析といっても『分 析』ではなく、どのページが読まれているか、各ページごとの離脱率はどうかなど、『集計』であり計 測をしていたのだ。 そこから、個としてのお客を引き出し、セグメントをより細かく分けたり、個に合わせたメールマーケティングを行うための『分 析』になってくる。 やがては個客のサイト内での行動履歴とメール配信結果を基に分析し、興味を察知したり予測確率の手法で購買予測を する時代がすぐに来る。 そうれなば本当の意味でのOneToOneになってくるのだ。(加辺友明)
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