この記事は2009年6月29日にCNET JAPANへ投稿したものです。
総務省が発表した『平成20年度「通信利用動向調査」の結果』から10年ほど前、インターネットの利用者は1998年末で1,694万人で人口
普及率では13.4%だった。 Yahoo!
JapanおよびMSNが開始されたのが1995年、Googleが開始されたのが1998年と、これら検索サービスも10年を少し経過したところだ。
当
初まだ検索エンジンがなかった、サイト名とURLが記載されていた”イエローブック”のような本を購入したり、雑誌で紹介されているサイトを見ていた。
それから今日に至り、ECを囲む様々なネットサービスがあっという間に登場してきた。インターネット利用者は2008年末で9,091万人で人口普及率
75.3%と、なくてはならないインフラへと急成長を遂げた。 これにはブロードバンドの普及と常時接続がもっとも貢献しているように思える。
数
年前「これからECはどのようになるのか?」と尋ねられたことがあるが、私の答えは「インターネットはまだ10歳の子供なので、将来どう成長するかわから
なくて当たり前」だった。 さて本当にどんな方向に進むのだろうか。
集合から個へ
まずもって言えるのは、顧客は「集合から個へ」に必ず進んで行き、サイトは「個から連合へ」行
くことだ。
今まで個人のリアルタイムな興味は分からず、せいぜい大きなセグメント化し、それを集合としての捉
え方をしている。もっとも簡単な例では、会員登録時にアンケートでどのカテゴリーに興味があるかという質問をした程度だ。 現に今受け取っているサイトか
らのメルマガも、集合に対してのメルマガだ。 しかもほとんどはセグメント化もしていない。 個の興味はライフスタイルに合わせて変化しやすく、複雑だ。
したがって、興味が移ればメルマガはすぐにゴミ箱行きになってしまう。
個を知るには個のネット上での行動を
できるかぎり知りたい。 そしてそれには膨大なデータの高速な分析が必要になってくるが、サーバを含む技術の発達などでそれもようやく可能になってき
た。(ここから深くはビジネス上まだしゃべれない。)
ECサイト間の連合
行動データをできるだけ多く集めることは、大きなポータルサイトでない限り、一つのサイトでは難しい。 商材が限られていてデータとしては偏るから
である。 だからといってモールだと個々のショップ間での都合が出てしまい上手く行かない。 ただ、モールオーナーはすべてのデータを知り得るので、これ
を使って新たなビジネスを追加することになるだろう。 したがって一つのECサイトはそのグループ企業、またグループでなくともコラボレーションによって
来店者情報を共有する必要が起きる。 (ただし、個人情報の壁を合法的に乗り越える必要があるが) 情報共有するにしても、同じような商品カテゴリを扱う
ECサイト同士ではデータに偏りが出過ぎるため、異なる商材を扱うサイトと情報を共有することだ。 そこで一例としてサイト間で行動ターゲティング広告を
出し合うのもかなり有効であり、共同の行動分析が行えることだ。この形態のサイト運営は、個客行動をとらえるために、
必要な要素となってくる。
iphoneに見るユーザビリティ
私もiphoneを使ってamazonでよく本を購入する。 それはパソコンよりも便利(寝ながらでもできる)
で、携帯電話よりも分かりやすいからだ。 余談だがtwitterにしても携帯で見るより、遙かに分かりやすい。 携帯電話を購入すると厚いマニュアルが付いてき
たが、iphoneを購入してもマニュアルは付いてこない。 分からなければサイトで見ればいいのだが、その必要もほ
とんどない。 それ位、感覚で操作が分かる。最近話題のテレビでネット通販ができるアクトビラ。試しに使ってみたが、とても便利だとは思えない。 簡単だ
が操作がひどく煩わしいのだ。 操作性が置き去りになっている。 なぜテレビリモコンを改良しないのだろうと不思議に思う。
このiphone風の
ユーザインターフェースは、これからいろいろな面で採用されることになるし、携帯電話も急速にこの手法に移っていくだろう。
RSS=隙間時間
また、iphoneを使うようになってもっとも見ているのは、RSSを使ったニュース配信だ。 今までパソコンでRSSリーダを使っていたが、
iphoneだとちょっとした隙間時間によくこのニュースを見ている。
これはニュースだけでなく、ECサイトからのお知らせはこれからはメール配信と同じように積極的にRSS化されていく。 隙間時間に割り
込めるのはRSSリーダーかと思う。
「売る」から「買ってもらう」へ
消費者の時間の使いかたが、これからはもっとシビアになる。 ECサイトは、個客の生活時間の中で、隙間時間で
のショッピングは重要な要素となってくる。 リアル店舗でのショッピングは行き帰りの交通時間・交通費余分にかかる。 夜中にちょっとECサイトで買い
物、この隙間時間を使ってサイトでショッピングが益々多くなってくる。 前出の総務省のデータでは2008年末のインターネット利用者のうち、ECサイト
で商品・サービスの購入はパソコンで45.5%となっている。 携帯からは31.5%と
なっている。
「売る」というのは商品を売るための機能を重視していると考える。 「買っても
らう」というのは機能のほかに、サービス・信頼など目に見えない付加価値や顧客満足を重視すると考える。
ECの基本要素は4
つ。 認知・集客、購買単価、転換率、リピート率だ。 今後益々ECサイト間の競争が激化するが、「買っ
てもらう」サイト作りにはサービスレベルの向上、商品戦略で明確な差別化を図ることが必要だ。 これは価格競争への対抗策と同じ考え
だ。 機能は揃ってきたが、サービスレベルにはまだ改善の余地があるのではと思う。 そう考えると、先ほどのパソコンで45.5%、携帯
で31.5%は決して多くはなく、まだまだ大きく伸びる余裕持っているのだ。(加辺友明)
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