この記事は2009年6月16日にCNET JAPANに投稿したものです。
この言葉が言われ出したのはECがやっと一般化して出した頃の2000年あたりかと思う。Dペパーズ+Mロジャースが書いた 「OneToOneマーケティング」の日本語版が出版されたのは1995年で、顧客から個客とあえて呼ぶと何となくOneToOneを意識しているように 見えたものだ。
OneToOneとは文字通り個客一人一人に対するマーケティン グのことであり、マスマーケティングが終焉を迎え、これからは個の時代だと言われてきている。
しかし、それからほぼ10年経ったがECサイト各社のメルマガを読んでも、未だに「何となくOneToOne」のままだと思う。言葉から受け る印象は簡単なように思えるが(何たって始めて習った英単語のOneとToしかでてこない)、実のところこれが案外と難しいのだ。いや、かなり難しいの だ。それはOneToOneをやるには個客の分析をしっかりと行わなければならないからだ。それだけ細かく分析をしようとしても、第一従来のデータベース では追いつかない。また、個客に対応できる運営側の体制もままならない。
そんな中で、かなり昔になるが最初に提案したのが「感想メール」だ。 購入した商品はいかがだったか聞くためのメールだ。 それがあるのとな いのとでは、消費者の受け取る気持ちが違うのだ。 これはただ、購入後何日か後にその旨のメールを送ることで済むので何とかなる。 この種のメールを送っ てくれるECサイトは今もいくつかあるが、消耗品などを購入しただけでも送ってくるので、本来は感想メール自体も購入商品の種類によって出したり出さな かったりしたほうがいいと、いまさら思う。この感想メール、特に食べ物にはいい。食べた時美味しければいいのだが、そうでない場合もあり、一言言いたくな る。
これを買った人は、これも買っています
知る限りamazonが当 初から始めているリコメンドだろう。今はいろいろ改良されたようだが、協調フィルタリングという方式のリコメンドエンジンを使っている。協調フィルタリン グの基本構造は簡単だ。縦に書籍、横に顧客を置きマトリックスを作る。 その人が買った書籍から、その書籍を買った顧客を見つけだし、その顧客が何を買っ たかを知ればいいのだ。データが少ないうちは精度の高いリコメンドはできないが、 amazon位の大量の購買データがあればかなり精度の高いリコメンドができるとは思う。
今は協調フィルタリングを 用いたリコメンドエンジンだけでなく、いろいろな種類のリコメンドエンジンが続々出てきているので、これからが楽しみだ。
分析から予測へ
集計は もともとコンピュータの得意とするところで、始めから集計機能はあった。分析もいろいろな角度から見られるビジネスイ ンテリジェンスが使われている。しかし、それもそこまででこれから重要になるのは予測だ。(詳しくは伝えられないのが 残念ですが)
客は個、サイトはマス
この予測ができて始めて真 のOneToOneが実現する。 多種の商材を販売してかつ大量の顧客を有しているところはいいが、そうでもなければ今後複数のECサイトが集まりデータ を共有するようになる。(個人情報保護法の課題は残るが) そんな時代が来る。 そうなれば行動ターゲティングの精度が上がり、より多くのデータから分析 が可能になり、顧客の高度な行動予測も可能になってくる。 ECサイトも1社から得られる顧客の行動パターンはたかが知れている。それは顧客がサイトに来 ているときだけの短い時間だけのデータだからである。 ECサイトは連携してマスになる必要があるのだ。
背中の一押し
今は的外れな一押しが多い が、個客の行動パターンが分かってくると、次に何を買おうとしてしているのか、それはいつ頃なのかはきっと読めてくる。そうなれば、その個客に対してメー ルで一押しする。 ほしいだろうと思われる商品と、いつ頃かがわかればいいのだ。
以前、ブログが出始めてきたときに、スパムの多いメルマガは読まれなくなるのではと思っていた。 そうではなく、単に不完全なデータしか揃わ なかったからだ。 必要なデータさえ揃えば、本来のメールマーケティングがきっと実現する。
OneToOneをやるには前提がある
サイト自体の信頼性、ユー ザビリティー、コンセプトの表現、豊富な商材などがしっかりと揃っていなければ、どんなに優れたOneToOneのビジネスモデルを創造できたとしても、 うまくいかなかったり、軌道に乗るまでにかなりの時間が掛かたりする。いわゆる「ちゃんとしたサイト」が前提だ。 予測モデルが開発される前にサイト間連 携を考えて置くべきだ。予測モデルはそれほど遠い将来のことではないからだ。
(加辺友明)
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