この記事は2009年12月14日CNET JAPANに投稿したものです。
12月になると、店舗ではクリスマス・ソングが流れ、飾り付けはクリスマス独特の緑と赤のものが多用され、クリスマス気分を演出しています。こ
のシーズン、歳暮需要もそうですが、ギフト全般の需要が増えます。
店舗では販売促進のため、シーズン毎に店舗では「演出」に工夫を凝らしていま
す。
1年を通して「演出」で顕著なジャンルとして、ファッションが挙げられます。私は当初、あまり意識していなかったのですが、VMD(ビジュアルマー
チャンダイジング)を駆使してシーズン毎に「演出」を変えているのですね。
定年退職したてのシニアですが、通常衣料をスーツからカジュアル系に移
行しようとメンズの商材を取り扱うECサイトを見て廻りました。しかしどうしてもサイトで買う気になれなく、結局リアルの店舗に行って購入しました。他の
商材を扱うECサイトでは、ほとんどECサイトで購入しているのですが、ファッションに関して店舗とECサイトでは何が異なるのでしょう。
買う気になれなかった主な理由は以下の通りです
1.商品画像から自分が着たときの想像ができなかった
2.ボトムスを一つ選んだとし
ても、イメージがわかないためそれに合うシャツを画像から選ぶのがむずかしかった
3.表示サイズだけでは不安
4.ボトムスにしてもタック
があるものと、ないものとではシルエットの見え方がわからない
5.カジュアル衣料のネットでの購入に慣れていないためか、商品画像からでは、それ
を着ていくときのTPOがイメージできない
6.返品・サイズ交換が億劫
などでした。
1.リアル店舗での「演出・提案」
ネットでの購買行動を促進する策として考えたいのが「演出」と「提案」で
す。「演出」に対して、ネットとリアル店舗とでは大きな開きがあります。パソコンのモニターでは小さな二次元の平面に比べてリアル店舗では3次元の空間な
ので、ECサイトをまったく同じにしようとするのには、当然無理があります。
しかしリアル店舗では、シーズンに合ったVMDを工夫し、洗練された
接客方法を使って「演出・提案」をしています。この演出効果はファッションなど感
覚的な商品に特に有効ですが、ほかの業種でも季節ごとやイベントごとに垂れ幕などを使って「演出」していると思いますし、クリスマスシーズンにはBGMや
店員さんがサンタクロースのコスチュームを着るのもそうです。
2.無味乾燥なサイト
では、ECを含むネットサイトではどうでしょうか。残念ながら上手(うま)く「演出」しているところは一部を除き、ほとんどないと思えるくらい、 あっさりしていて無味乾燥的です。せいぜい垂れ幕の代わりに、ECサイトのトップページにキャンペーンバナーがある程度です。しかもそのECサイトから配 信されるメルマガも、最近では「演出」しているメールもあまり目にしていません。(以前は、思わず最後まで読んでしま うようなステキなメルマガもありましたが・・・)
3.店舗とECサイトの格差
私から見たネットサイトは実店舗とは違いは次の通りです。
ネットでは
・わざわざ店舗に行かなくてもいい
・24時間オープン
している
・手に取って見られない
・ほかのショップと価格の比較がすぐできる
・ほかの店に移ることが簡単(低スイッチングコスト)
・
家電などモデルコードはどこでも同じであれば、すぐ見つかる
・目的なくサイトに訪れ、「何かいいものないかな~」では、容易に見つけられない
・
店舗に比べてわくわく感が少ない(各サイトの滞在時間を見てみたい)
決定的に異なるのは、「ウィンドウ・ショッピングを楽しめない」という点であり、ショップに入っても、「あ!これいいな~」と思わせる演出がされて いないのです。一般的なECサイトにあるカテゴリー一覧と、カテゴリー内の商品一覧と、商品詳細ページを実店舗に当てはめてみると、ちょうど家電量販店の ような雰囲気です。家電量販店のレイアウトのフロアーに、たとえばファッション商材を置いて売れるのかと言えば、売れないと思います。価格勝負のバーゲン 会場のように見えてしまいます。特に高級ブランド系の商材であればなおさら売れなく、そもそもイメージを損ねるだけでブランド感は伝わりません。
4.これからのECサイトは「演出・提案」で差別化
サイトでの伝え方が難しい商材であるファッションを例に取り上げてみます。
これからのECサイトではより高度な差別化が求められてきます。
ファッション商材はTPOに沿って消費者のイメージをふくらませる必要があります。本来の差別化とは価格ではなく、より店舗に近づけることだと考えます。
ファッションは身につけるもので、消費者はそれがTPOを考え、自分に似合うかどうか判断(想像)します。そのため場面設定からコーディネーションの訴求
が求められ、さらに店舗で良くあるように悩んでいるお客には代替え案を提示します。色違い、シルエットが似ている服を提案することです。
店舗では
接客の上手い販売員さんが、お客にそれとなく好みを聞き出し、上手い提案を行っています。
多くのECサイトでは、商品を単品で表示していることが多く、似合うのかどうかもイメージできないのです。
店舗ではフィッティング・ルーム
もあり、袖(そで)を通すことでフィット感を実際につかめ、さらにカラーコーディネートを確認でき、コーディネーションを楽しむことさえできます。ネット
でそこまでは無理な話としても、少しでも近づけることは可能です。それがサイト上で「演出・提案」をすることだと考え
ます。
ファッション雑誌を見ると、単品の紹介は補足にしか過ぎず、トータルでコーディネーションしたモデルの写真があり、その隅にそれぞれの単品の名前と 価格が書かれていることが多いのです。なぜ、ネットでもそうやらないのでしょうか。VMDの教科書にあるような写真(イラスト)とそこから商品提案へと繋 (つな)げる仕組みこそが、サイトにわくわく感を呼び、これからの差別化になるものです。VMDは店舗だけではなく、ECサイトにも必要なのです。そうす ることで、季節の変わり目などは、気になってサイトに訪れるようになるのではないでしょうか。(加辺友明)
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