この記事は、2009年8月10日にCNET JAPANに投稿したものです。
どこだったか忘れましたが、あるサイトでブックレビューがあり、面白そうだったので「『社会調査』のウソ」(谷 岡一郎著・文藝春秋)という本を読みました。その帯には「データに騙されるな」という文章で興味が湧き、今回はそれを読んだあとインターネット利用者数を 改めて考えてみました。
自分では政府や民間から出されている調査データを良く見ているほうだと思うのですが、それまではあまり疑問を持たずに、そのまま受け入れていまし た。特に政府から出されているデータは信じていたのですが、それが本当に正しいのか今になって疑問符だらけになってきました。確かに民間から発表された データでは母数が数百とかなっていると、一部の見解としか見ていなかったのですが、これからはたとえ母数が多いものでも疑ってかかるべきなんだと思うよう になりました。
そこで、自分が作る事業計画などに良く利用している総務省の「情報通信白書」のデータでは、イ ンターネット利用者数は平成20年末に9,000万人を超えたとなっています。同白書によれば、13歳から39歳まではインターネット 利用率が95%を超えているそうで、これを見た限り、もはやインターネット利用者は飽和状態なのかと思います。ただし、この数値は過去1 年間にインターネットを利用したことがある者を対象として行った本調査の結果からの推計値となっています。
過去1年間でインターネットを利用というのはどのようなものなのか、という疑問でそのデータのもとになった『通 信利用動向調査』で調査の概要という目的とか対象などを示したものがあったので改めて見てみました。不思議と調査の範囲では年齢が満 20歳以上の生態構成員がいる世帯が対象だったようです。それでは13歳から19歳まではどうやって調べたのかというと、比重調整という難しそうな統計理 論で計算されているようでした。
実際に自分がインターネット関連の仕事をしていて、インターネット利用者数が9,000万人を超えたという実感は全然なく、せいぜいまだ人口の 50%程度かあるいはもっと低いような気がしています。これはたぶん携帯メールだけをやっていてもインターネットを利用したことになるからなのでしょう か。
気になるデータでインターネットの被害というところがあり、そこではスパムメール受信の被害が 最も多く、パソコンが36.3%、携帯が35.6%となっています。この値は利用者全体から見るとかなり低いように思えます。スパムメー ルを受信したという人はほとんどのインターネット利用者になるのではと思うのですが、この値が少ないのは本当に利用している人が少ない ためではないかと思ってしまうのです。1年間に1・2度インターネットを利用しただけの人は殆ど使っていないということになり、スパムの被害もないと思え ます。ということは、インターネット利用者はどうしても白書の示す値の半分以下の4,500万人以下ではないのかと思ってしまいます。
インターネットは普及されたというのはまだまだで、まだ普及の半ばにいる状態と考えても良いのではないでしょうか。インターネットの本当の普及には まだ様々な問題があり、9,000万人を超えるにはあと5年以上待たなければならないのでしょう。つまり、それに関連するネットビジネス 市場はまだまだ始まったばかりと言えます。(加辺友明)
最近のコメント