この記事は2010年2月23日CNET JAPANに投稿したものです。
長いことSI企業で働いていて、今はコンサルタントとして顧客側に立っています。そこで強烈に意識が変化し ていったのですが、今回はこの辺りを書きます。目線が180度向きを変えるという言うのはこのことだと思いました。
システム構築を提案する側とされる側では、まったく意識が異なります。両社
とも自社のためと思っているのは共通する部分ではありますが、提案する側は複数社の競合との戦いでもあり、そこに打ち勝つため顧客にとって有益な情報を最
大限取り入れた提案を行います。競合している企業に勝つか負けるかは費用面、提案内容、技術力、SI企業自体の安定性などが要因となり、安心して任せられ
るかという点で決まります。
SI企業間の競争は、”採用”ということで、勝負は付き、後は粛々と要求仕様に基
づきシステムを構築していきます。
一方、顧客側(される側)では、まだまだ緊張は続きます。システム構築をして予定通り本当に効果を発揮できるのか?時間的ロスも含めて投資対効果が 最大になるか?要員構成はどうするのか?悩みはこの点に集中します。ほとんどの場合、システム構築は自社の命運がか かっています。SI企業からみて、負けるとは提案競争に最大限努力したのが、痛いけど1社ロストしたというだけになります。直接的にSI企業の命運には大 きな影響を与えてはいないのです。(提案ロストはSI企業の経営にはプラスにはなりませんが、大打撃にはならないのです)
顧客側の命運がかかったシステム構築は、私が今までに感じたことのなかった強烈な緊張感に包まれます。ありとあらゆるリスクを考え、それらをできる かぎり最小限にするための策を立てて、おかなければなりません。しかも、経営計画も”たられば”的要素が多くなり、これも緊張を増幅させる一因となりま す。
自社内で解決しなければならない事柄も多く、理想論だけではうまく行かないことに悩まされます。SI企業からしてみれば、顧客社内の問題には距離を 置いて見るため、概して理想的にシステムを構築していこうと考えがちだと思います。
顧客側はあまり問題点をさらけ出しませんが、SI企業も単に要求された機能を満足させるだけではなく、顧客の持つ強烈な緊張感を 立場は違えど、常に感じ取ることが絶対的に必要だと思います。(加辺友明)
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